フレデリックはソル=バッドガイか?!  

「あの男」という呼称を不自然に感じるのはわたしだけでしょうか?固有名称不明の人物を指す三人称ならば、他にもあります。
さしづめソルなら「あの野郎」「あいつ」などと言うのが自然な気がします。
正体不明なのに性別だけが明らかであるというのも妙な話です。
ソルは「あの男」の名前を知らないのではなく、その名を口にするのを避けているのではないですか?
なぜならそれは・・・・・



「よくここまで辿り着いたものだ、バッドガイ。」
「・・・・・・」
「いや、君は普段ソルと呼ばれているのだったか。君に会ったら訊いてみたかったのだよ、その名前は自分でつけたのかね?」
「てめえには関係ねえ。」
「私は君にそんなコードネームをつけた覚えはないのでね、クローンNo.13。私のことはちゃんと名前で呼んでくれたまえ、まだ覚えているだろう?
 私の名は・・・フレデリックだよ」


「GEAR人体実験」初の被験者となったアメリカ人男性フレデリック・・・後のソル=バッドガイ。
彼の素性は不明である。だが彼が自らGEAR細胞抑制装置を開発していること、神器アウトレイジも
彼の手によるものとされていることから、彼が実験台にされた死刑囚や実験に志願した軍人ではなく、
科学者−それもGEAR計画の中枢にいた者であったことは明らかであろう。
ただここで一つの疑問が生じる。
GEAR計画とは、果たしてプロジェクトの中核を担うほどの人材を惜しげなく第一被験者にできるほど、成功の自信若しくは人材の余裕があったのだろうか?



ここにGEAR計画の中枢をなす一人の科学者がいる。彼は今問題を抱えている。
動物実験は個の生命力強化という点では成功であったが、生態系強化という点では失敗であった。
その形状を変え永遠ともいえる生命を得た個体に繁殖は不要である。生物の基本となる種族保存本能さえ欠落し、残ったのはただ増幅された凶暴性だけだった。
しかしまた、それまでの実験で、形状及び思考力の維持には素体の知性が大きく関与することも確認されていた。
次は是非人体実験を行いたい、だがその人選は?非合法な被験体はいくらでも集められる。
しかし死刑囚にGEAR細胞を移植して何になるだろう、少なくとも被験者は高い知性をもつ個体であるべきだ・・・
・・・そう、私のような・・・・・。


「そのGEAR細胞抑制装置は何処のラボで創ったんだい?なかなかよくできているね、だがどうも不格好だ。私がテスタメントに与えたものの方がスマートだろう?」
「悪かったな、俺はアウトレイジを創るのに忙しくて見栄えなんか構ってる暇はなかったんだよ。」
「おいおい、創るのに、ではなくて盗むのに、だろう?アウトレイジを創ったのは私だよ。」
「何をバカな・・・!だいたい俺はクローンなんかじゃない。」
「よく思い出してごらん、No.13。君がGEAR細胞を移植されてから研究所を脱走するまでの間にアウトレイジを開発する暇がどこにあったのだね?そもそもどんなデータを元にどんな設備の元でそれを開発したと?」
「それは・・・このラボで・・・ここのデータを・・・」
「それは君に移植された私の記憶だ。アウトレイジの開発はGEAR細胞の研究と平行して進んでいた。」
「違う・・・俺は・・・」
「私は科学者として好奇心を抑えきれなかった。自我を失わずにいられるという自負もあった。だがそれでもまだ私は自分自身を過小評価しすぎていたようだ。」
「・・・・・黙れ。」
「よもや自分のクローンが、私自身を脅かす存在となろうとは。」
「俺はオリジナルだ。クローンはてめぇだ。」
「君はそう思うのか。ではオリジナルとは何だね?君が君であることの証明は?」
「それは・・・・・」
「なぜ君はフレデリックと名乗らない?」
「・・・・・・・・」
「フレデリックは君か?それとも私か?」


あの時・・・私はどうしてもGEAR細胞が人間に及ぼす効果を我が身で確かめたかった。科学者としてその欲求はあまりに甘美だった。
しかし初の人体実験に成功の保証はなかった。だから私は自分自身のクローンをつくった。
自身の記憶も全て移植した。私という存在の完璧なバックアップだ。
「私」の何体かは徹底したデータ採取に使用した。そして・・・・・
あれから長い長い時が過ぎた、とても長い時間だ。逃げたのはどちらで追ったのはどちらだ?
最初の被験者となったのはどの「私」だったろうか・・・・・・・・・・・・・・・

「ゴタクはいらねぇ、俺の名は、ソル=バッドガイだ!」


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これは「あの男」の正体の推理ではありません。
貴重な科学者を、成功の見込みの薄い第一号被験者にするような惜しいことをするかしら?ただそれだけの疑問から生まれた妄想です。
「あの男=未来のアクセル」というのは濃厚な線ですが、それはアクセルファンとして哀しい。
では「あの男」にアクセルはどう関わってくるのでしょう?
時を越える能力は遺伝子に関わる生まれつきの物か、魔法科学論の範疇か?
そもそもアクセルは本当に20世紀の生まれなのか?
22世紀に生まれた赤ん坊が20世紀のスラムに飛んだのだとしたら・・・・・

それはまた別の物語としましょう。


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